## 広告の"場所"と"評価軸"が、同時に変わろうとしている
2026年の夏、世界の広告・マーケティング業界で、異なる方向から同じ変化を指し示す3つのニュースが出た。Googleは広告管理の操作自体をAIアシスタントに委ねる機能を公開し、Criteoは「ChatGPT内での広告」で購入転換率が1.5倍になると実証した。そしてカンヌライオンズは今年の審査軸を「AIで作ったか」から「AIで何を証明したか」へと転換させた。
広告が表示される"舞台"が検索結果ページからAIチャット画面へと広がり始め、「AIを使っている」という事実だけでは差別化にならなくなった時代が、確実に近づいている。
## Google「Ask Advisor」——広告設定の専門知識という"壁"が崩れ始めた
5月20日のGoogle Marketing Live 2026で発表された「Ask Advisor」は、Google広告・Analytics・ショッピング管理機能(Merchant Center)をひとつのAIアシスタントが横断して操作・提案する機能だ。英語ベータ版として現在展開中で、今夏から本格的なロールアウトが始まる。
これまで、Google広告の入稿や効果改善には一定の専門知識が必要だった。キーワードの選び方、入札戦略、配信設定の最適化——慣れていないと設定画面を見ても何を直せばよいかわからない、という声は今も多い。Ask Advisorはその"壁"を取り払う可能性を持つ。広告の改善提案を自然な言葉で質問するだけでAIが答え、必要な設定変更まで誘導してくれる仕組みだ。
さらに「Asset Studio」では、テキスト・画像・動画のクリエイティブをひとつのプロンプトから一括生成できる。「Business Agent for Leads」は検索結果ページ上でAIがチャット形式で商品を案内する新フォーマットで、これまでの問い合わせフォームに代わる集客導線として位置づけられている。
日本でもリスティング広告をインハウスで運用する中小企業は増えているが、「設定はしているが改善方法がわからない」という声は根強い。Ask Advisorのような機能は、実質的な運用コーチが付くような効果をもたらす可能性がある。ただ、AIが示す提案に乗るだけでなく、「なぜその提案なのか」を理解して判断できる力が、インハウス担当者には今後いっそう求められるだろう。
## Criteo × ChatGPT——「LLMの中の広告」が1.5倍の転換率を示した
広告技術大手のCriteoが2026年3月、OpenAIのChatGPT内での広告表示パイロットに業界初の広告技術パートナーとして参画した。ChatGPT(無料版・Goプラン)を使っているユーザーに対し、会話の文脈に沿った商品推薦を行う仕組みで、流入したユーザーの購入転換率は他の流入経路と比べて約1.5倍という社内データが公表されている。
Criteoが持つのは7億2,000万人の日次アクティブユーザーと年間取引額1兆ドル超の購買履歴データだ。これをChatGPT上での商品推薦に活用する構造は、検索広告のロジックをAIチャット画面に移植するものとも言える。自社ツール「Commerce Go」では、「キャンプ用バックパックをもっと売りたい」のような自然な言葉で目標を入力するだけで、数日かかっていたキャンペーン設定が約10分で完了する。
日本でも「ChatGPTで商品を調べてそのまま購入した」というユーザー体験は徐々に広がっている。これは単なる行動変容ではなく、マーケターの視点から見れば「新しい広告面の誕生」だ。かつてSEOで自社サイトへの流入設計を行ったように、「ChatGPT上で自社商品がどう紹介されているか」「AIチャット上での自社の見え方」を意識・設計することが、次のマーケティング課題として浮上してくる。
## カンヌライオンズ2026——「AIで作った」はもう自慢にならない
6月22〜26日に開催されるカンヌライオンズ2026は、広告・クリエイティブ業界の評価軸の転換を体現している。2024〜2025年は「AIを活用して制作した」こと自体が新しさとして評価される雰囲気があったが、今年の高評価作品はむしろ逆だ。Doveの「The Code」、MicrosoftのSuper Bowl広告、Coca-Colaの「Masterpiece」はいずれもAIを表に出さず、人間的な感情や文化的な共鳴を前面に打ち出しながら、ビジネス成果を明確に示した。
背景には、消費者の目が肥えてきたことがある。AIで量産されたコンテンツへの慣れと反発が広がり、「AIっぽい」だけでは共感を得られなくなった。カンヌの審査はエンゲージメント率・継続率・売上への直接貢献を重視しており、「話題を集めたか」より「何が変わったか」が基準になっている。
日本のマーケティング現場でも、この流れは他人事ではない。AIで記事・バナー・動画を作る企業は増えたが、「そのAI活用で何が変わりましたか」と問われて数字で答えられる担当者はまだ少ない。社内報告でも取引先へのプレゼンでも、ツール名を紹介するのではなく「成果と数字で語る」習慣への切り替えが、これからのマーケターの説明責任の基本形になるだろう。
## 日本のマーケターへの示唆
3つのニュースを貫くのは、「AIの存在感」から「AIの成果」への評価軸の移動だ。広告の配信先がAIチャットへと広がり、設定・制作の自動化が進む一方で、マーケターに残る仕事は「目標を設定し、成果を証明すること」に集約されてくる。Google広告の設定が自動化されても、「何のために運用するか」を決めるのは人間だ。ChatGPT上に広告面が生まれても、「自社をどう見せたいか」を設計するのは人間が担う。カンヌが示すとおり、AIを使ったことではなく「AIで何を変えたか」を語れる担当者こそが、次の時代のマーケターとして評価される。
## 出典
- [Google Marketing Live 2026: Everything you need to know - Search Engine Land](https://searchengineland.com/google-marketing-live-2026-everything-you-need-to-know-478167)
- [How Criteo is turning LLMs into its next big advertising channel - Digiday](https://digiday.com/media-buying/how-criteo-is-turning-llms-into-its-next-big-advertising-channel/)
- [Cannes Lions 2026: The AI Hype Era Is Over, Proof Is the New Flex - AdPulse](https://adpulse.com/cannes-lions-2026-the-ai-hype-era-is-over-proof-is-the-new-flex/)
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