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マーケティング戦略

消費者の半数が「AI不使用ブランド」を支持——Gartner調査が示す信頼性リスクとBtoBマーケターの対応策

消費者の半数が「AI不使用ブランド」を支持——Gartner調査が示す信頼性リスクとBtoBマーケターの対応策

「AIを使うブランド」は敬遠される時代へ

生成AIの業務活用が急速に広がるなか、消費者の意識はまったく逆の方向に動いています。2026年3月に発表されたGartnerの調査結果は、マーケティングにAIを導入している企業にとって見過ごせない警告を含んでいます。

米国消費者の50%が、生成AIを使わないブランドに好んでビジネスを提供すると回答したのです[1]。

この調査でいう「生成AIを使うブランド」とは、消費者向けのメッセージ、広告、コンテンツにAIを組み込んでいるブランドを指します。つまり、社内の業務効率化にAIを使うことではなく、顧客の目に触れるコンテンツにAIが関与していることへの拒否反応です。

BtoB領域で活動するマーケターにとっても、これは「BtoCの話だから関係ない」と片付けられるものではありません。本記事では、Gartner調査のデータを紐解きながら、BtoB企業が取るべきアプローチを考察します。

Gartner調査の主要データ:信頼の崩壊は数字に表れている

Gartnerが2025年10月に実施した1,539人の米国消費者を対象とした調査では、AI生成コンテンツへの不信感だけでなく、情報全般に対する懐疑心の高まりが鮮明に示されました。

調査で明らかになった3つの重要指標

指標 数値 意味するもの
GenAI不使用ブランドを好む消費者 50% 消費者の半数がAIコンテンツを避けたい
日常の意思決定に使う情報の信頼性を疑う消費者 61% 情報の真偽を積極的に疑っている
見聞きするコンテンツが本物かどうか疑う消費者 68% コンテンツそのものへの不信感
直感で情報の真偽を判断する消費者 27%(減少傾向) 「なんとなく信じる」から「自分で確認する」へ

特に注目すべきは、Gartner Marketing部門のシニアプリンシパルアナリストであるEmily Weiss氏の指摘です。

「マーケターは、生成AIをテクノロジーの意思決定であると同時に、信頼の意思決定として扱うべきです。消費者は何が本物かを問い、目にするものをより多く検証しようとしています」[1]

この言葉が意味するのは、AIの導入判断は「効率が上がるかどうか」だけでなく、「顧客の信頼を維持できるかどうか」の観点が不可欠だということです。

なぜ消費者はAIコンテンツを嫌うのか

消費者がAI生成コンテンツに抵抗を示す背景には、いくつかの構造的な要因があります。

1. 「本物かどうか分からない」不安

調査対象の68%が「見聞きするコンテンツや情報が本物かどうか頻繁に疑っている」と回答しています。ディープフェイク動画やAI生成のフェイクニュースが社会問題化するなか、消費者は「目に見えるもの」への基本的な信頼を失いつつあります。

ブランドがAI生成コンテンツを使うと表明した場合、消費者はそのコンテンツに含まれる情報——製品の効能、サービスの特長、数値データ——のすべてを「本当だろうか?」と疑いの目で見る可能性が高まります。

2. 検証行動の変化

Gartner調査のもう一つの重要な発見は、情報の真偽を直感で判断する消費者が27%にまで減少しているという点です。かつては「なんとなく信頼できそう」で通じていた情報発信が、いまや消費者自身による独自の検証にさらされる時代になっています。

消費者はレビューサイトの確認、複数ソースの比較、SNSでの口コミ調査など、能動的な裏取りを行うようになっています。AI生成コンテンツは、この検証行動のなかで「信頼できない情報源」として分類されるリスクがあります。

3. 「AI=手抜き」という印象

これはGartner調査の直接的な指摘ではありませんが、日本市場でも共通する傾向として補足します。AIが生成した文章や画像は、消費者から「企業が手間をかけていない」「顧客を大事にしていない」と受け取られることがあります。

特に高額な商材やサービスを扱うBtoB領域では、「この企業は自社のことを十分に理解して提案してくれているのか」という不安に直結します。提案書やホワイトペーパーがAI任せに見えた時点で、商談の信頼関係に影響を及ぼしかねません。

BtoB領域での影響:「見えない信頼コスト」

BtoCとBtoBでは購買の意思決定プロセスが異なりますが、信頼の重要性はBtoBのほうがむしろ高いと言えます。その理由を整理します。

購買サイクルが長く、関与者が多い

BtoBの購買決定には複数のステークホルダーが関わり、検討期間も数か月から数年に及びます。その過程で共有されるコンテンツ——ホワイトペーパー、事例紹介、技術資料——の信頼性が疑われれば、商談全体が停滞します。

Gartner調査が示すように、68%の消費者がコンテンツの真偽を疑う環境では、BtoBバイヤーも同様の姿勢でベンダーのコンテンツを精査していると考えるのが自然です。

専門性と正確性への期待が高い

BtoBコンテンツには業界固有の専門知識や正確なデータが求められます。AIが生成した情報には「ハルシネーション」(事実に基づかない内容をもっともらしく生成する現象)のリスクがあり、専門家の目にはすぐに見破られます。

一度でも不正確な情報を発信すれば、その企業の専門性そのものが疑われます。BtoBにおける信頼回復のコストは、BtoCの比ではありません。

日本市場の特殊性

日本のBtoB市場には、以下の特徴があります。

  • 対面関係を重視する文化:営業担当者との信頼関係がビジネスの基盤となるため、コンテンツの「人間味」が重視される
  • 品質への高い期待:「Made in Japan」の品質意識がコンテンツにも波及し、「AIで量産されたもの」への抵抗感が強い傾向がある
  • リスク回避志向:新しい技術の導入に慎重な企業文化のなかで、AIコンテンツを積極的に受け入れる土壌がまだ整っていない

AI活用と信頼性を両立する方法:3つの実践原則

Gartner調査のEmily Weiss氏は、マーケターに対して具体的な指針を示しています。

「リスクを低減し信頼を構築するために、マーケターは生成AIを必須ではなく選択肢にすべきです。明らかに補助的で顧客に即座に価値を届けるユースケースから始め、AI活用のエクスペリエンスにはラベルを付けて、いつ・どのようにAIが使われているかを人々が理解できるようにすべきです」[1]

この助言を日本のBtoBマーケティングの文脈に落とし込むと、以下の3つの原則に整理できます。

原則1:透明性の確保——AIの使用を明示する

AIを活用したコンテンツには、その旨を明記しましょう。「このレポートのデータ分析にはAIツールを活用しています」「本記事の初稿作成にAIを活用し、専門家が監修しています」といった記載です。

隠すよりも開示するほうが信頼につながります。Gartner調査が示すように、消費者は「何が本物か」を積極的に検証するようになっています。先手を打って開示する企業は、逆に誠実さの証として評価される可能性があります。

実務のポイント:

  • コンテンツのフッターやメタ情報にAI活用の有無を記載するルールを社内で策定する
  • 「AI活用ポリシー」を自社サイトに公開し、どの業務でどのようにAIを使っているかを明確にする

原則2:選択肢の提供——オプトアウトを用意する

Weiss氏が強調する「AIを必須ではなく選択肢に」という考え方は、BtoBでも重要です。たとえば、AIチャットボットによるカスタマーサポートを導入する際、人間のオペレーターへの切り替えオプションを常に提供する。AIが生成した提案資料と、人間が作成した資料を選べるようにする。

顧客にコントロール権を渡すことで、「押し付けられている」という不快感を回避できます。

実務のポイント:

  • 顧客接点でAIを導入する際は、必ず「人間対応への切り替え」動線を設計する
  • アンケートやフィードバックで、AIコンテンツへの受容度を定期的に測定する

原則3:検証可能性の担保——主張には裏付けを添える

Gartner調査で明らかになった「直感で真偽を判断する人が27%に減少」という傾向は、すべての主張に検証可能なエビデンスを求める消費者が増えていることを意味します。

BtoBコンテンツでは従来から「数字で語る」ことが重視されてきましたが、AIの普及でその基準はさらに上がります。単に「導入企業の生産性が30%向上」と書くだけでなく、調査方法、対象企業数、期間、条件などを明示する必要があります。

実務のポイント:

  • ケーススタディや導入事例には、可能な限り具体的な条件と数値の根拠を記載する
  • 外部の調査データを引用する際は、調査機関名、調査時期、サンプル数を必ず明記する
  • AI生成コンテンツを公開する前に、記載された事実関係を専門家がファクトチェックするプロセスを導入する

まとめ:AIは「武器」にも「弱点」にもなる

Gartnerの調査結果は、生成AIの活用が進むほど、消費者の信頼を失うリスクも高まるという逆説的な状況を浮き彫りにしています。

BtoBマーケターにとっての教訓は明確です。

  1. AI活用の事実を隠さない——透明性こそが信頼の土台になる
  2. AIを押し付けない——顧客に選択肢とコントロール権を渡す
  3. 主張には証拠を添える——検証可能なエビデンスで信頼性を担保する

生成AIは間違いなくマーケティングの生産性を高めるツールです。しかし、それを「どう使うか」だけでなく「どう見せるか」「どう説明するか」まで設計しなければ、効率化の代償として顧客の信頼を失うことになりかねません。

AI活用と顧客信頼の両立——これが2026年以降のマーケティング戦略における最重要テーマの一つになるでしょう。


出典: [1] Gartner / Business Wire, "Gartner Marketing Survey Finds 50% of Consumers Prefer Brands That Avoid Using GenAI in Consumer-Facing Content" (2026年3月16日) 調査概要:2025年10月実施、米国消費者1,539人を対象

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