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B2Bマーケティング

"全員に売る"時代の終わり〜ABMで高価値顧客だけに集中し、マーケティングROIを劇的に改善する方法〜

"全員に売る"時代の終わり〜ABMで高価値顧客だけに集中し、マーケティングROIを劇的に改善する方法〜

導入:なぜ今、あなたの会社にABMが必要なのか?

多くのB2B企業が、絶え間ないリード獲得競争に疲弊しています。「より多くのリードを、より安く」という従来型のマーケティング指標を追いかける中で、「本当に価値のある顧客」にアプローチできているでしょうか?もし、あなたの会社のマーケティングや営業チームが、以下のような課題を抱えているなら、本記事は大きなヒントになるはずです。

具体的には、マーケティングが獲得するリードの質が低く営業部門から不満が出ている、営業サイクルが長期化しなかなか受注に結びつかない、競合との価格競争に陥りがちで自社の価値を正しく伝えられていない、マーケティング活動の投資対効果(ROI)が見えにくいといった課題が挙げられます。

これらの課題は、多くの企業が陥る「広く浅く」のマスマーケティングの限界を示しています。しかし、悲観する必要はありません。解決策はあります。それが、**アカウントベースドマーケティング(ABM)**という戦略です。

ABMは、不特定多数のリードを追いかけるのではなく、自社にとって最も価値の高い顧客(アカウント)を明確に定義し、そのアカウントに特化した、パーソナライズされたアプローチを行うマーケティング手法です。本記事では、なぜ今ABMが重要なのか、その具体的なメリットと実践方法、そして日本企業が陥りがちな罠と、それを乗り越えるための視点について、専門的な知見から分かりやすく解説します。

問題の深掘り:見えない顧客、変わる購買プロセス

なぜ、従来のマーケティング手法は限界を迎えつつあるのでしょうか。その背景には、B2Bにおける購買プロセスの劇的な変化があります。現代のB2Bバイヤーは、営業担当者に接触する前に、自ら能動的に情報収集を行い、購買意思決定の大部分を終えてしまっています。

ある調査によれば、B2Bバイヤーの70%は、ベンダーに連絡する前に購買プロセスの70%を完了していると言われています。[1]

これは衝撃的な事実です。つまり、あなたの会社の営業担当者が顧客と初めて話すときには、すでに顧客の心は固まりつつあるのです。この「営業担当者が見えない範囲」での顧客の行動は「ダークファネル」とも呼ばれ、従来のマーケティング手法では捉えることが困難でした。この変化に対応できない企業は、いつの間にか顧客の選択肢から外されてしまうリスクに直面しています。

特に、顧客の検討期間が長く営業担当者が関与できない期間での情報収集が重要な「長い営業サイクルを持つ企業」、複数の部署や役職者が関わる購買決定においてそれぞれに最適化された情報を届ける必要がある「複雑な購買プロセスを持つ企業」、価格以外の価値を伝えるために早期の段階から顧客との関係を構築し信頼を勝ち取ることが不可欠な「競合との差別化が難しい企業」にとって、この問題はより深刻です。

さらに、2025年に向けてのトレンドとして、AIによるインテントデータ(顧客の興味・関心データ)の活用や、マーケティング・営業・カスタマーサクセスといった収益に関わる全部門を統合する**RevOps(レベニューオペレーション)**との連携が加速しており、ABMの重要性はますます高まっています。もはやABMは、一部の大企業だけのものではなく、変化の激しい市場で勝ち残るための必須戦略となりつつあるのです。

解決策の提示:ABMがもたらす圧倒的な成果

このような課題を解決する強力な一手こそが、アカウントベースドマーケティング(ABM)です。ABMは、単なるマーケティング戦術ではなく、企業全体の収益性を高めるための経営戦略と位置づけられます。その効果は、数々のデータによって裏付けられています。

| ABMがもたらす主要なメリット | データ | 出典 | | :--- | :--- | :--- | | 高いROI | ABMを導入した企業の76%が他の戦略よりROIが高いと回答 | ITSMA [2] | | 高い成功率 | ABM導入企業は60%高い成功率を達成 | ITSMA [2] | | 高いエンゲージメント | マルチチャネルABMは単一チャネルより300%高いエンゲージメント率を達成 | N.Rich [2] |

なぜABMはこれほど高い成果を出すのでしょうか。その理由は、ABMが「量より質」を徹底的に追求するアプローチだからです。不特定多数に同じメッセージを送るのではなく、ターゲットアカウント一社一社の課題やニーズに合わせて、まるでその一社のためだけに作られたかのような、きめ細やかなコミュニケーションを展開します。これにより、顧客は「自分たちのことを理解してくれている」と感じ、深い信頼関係が生まれるのです。

ABMは、そのアプローチの深さと広さに応じて、大きく3つの種類に分類されます。自社の状況に合わせて最適な手法を選択することが成功の鍵となります。

  • 1対1 ABM (Strategic ABM): 年間契約額(ACV)が非常に高い、ごく少数の戦略的アカウントに対して、完全に個別化されたアプローチを行います。アカウントごとに専任チームを組み、数ヶ月から1年以上の長期的な関係構築を目指します。
  • 1対数社 ABM (ABM Lite): 類似した課題や特徴を持つ、数十社程度の顧客クラスター(グループ)に対して、ある程度カスタマイズされたアプローチを行います。業界や企業規模などでセグメントを切り、共通のキャンペーンを展開します。
  • 1対多 ABM (Programmatic ABM): 数百から数千のアカウントに対して、テクノロジーを活用してパーソナライズされたアプローチを大規模に展開します。インテントデータやAIを活用し、効率的にエンゲージメントを高めます。

これらのアプローチを組み合わせることで、企業はリソースを最も価値のある顧客に集中させ、マーケティングと営業活動の無駄をなくし、組織全体の収益性を最大化することができるのです。

実践方法:明日から始めるABMの5つのステップ

「ABMが重要であることは分かった。しかし、具体的に何から始めれば良いのか?」そう思われる方も多いでしょう。ここでは、中小〜中堅企業がABMを実践するための5つの基本的なステップをご紹介します。

ステップ1:理想的な顧客像(ICP)の定義とターゲットアカウントの選定

まず最初に行うべきは、自社にとって最も価値のある顧客は誰かを定義することです。これを**理想的な顧客プロファイル(Ideal Customer Profile, ICP)**と呼びます。過去の優良顧客のデータ(業種、企業規模、売上、地域など)を分析し、共通項を見つけ出します。ICPが明確になったら、その条件に合致する企業をリストアップし、ターゲットアカウントリスト(TAL)を作成します。この際、外部の企業データベースや、特定のキーワードで検索行動を起こしている企業を特定するインテントデータを活用すると、より精度が高まります。

ステップ2:アカウント情報の収集とインサイトの獲得

次に、リストアップしたターゲットアカウント一社一社について、深く理解するための情報収集を行います。企業のウェブサイト、プレスリリース、IR情報、SNS、業界ニュースなどを調査し、その企業が現在抱えている経営課題、中期経営計画、組織体制、キーパーソンなどを把握します。この情報が、後のパーソナライズされたアプローチの土台となります。

ステップ3:パーソナライズされたコンテンツとキャンペーンの企画

ステップ2で得たインサイトに基づき、ターゲットアカウントの心に響くコンテンツを作成します。例えば、「〇〇業界におけるDX推進の課題」といった業界特有の課題に切り込んだホワイトペーパーや、「△△社の事例に学ぶ、生産性向上の秘訣」といった具体的な企業名を挙げたセミナーなどが考えられます。重要なのは、ターゲットアカウントが「これは自分たちのための情報だ」と感じるような、高い関連性を持たせることです。

ステップ4:マルチチャネルでの一貫したアプローチ

作成したコンテンツを、最適なチャネルを通じてターゲットアカウントに届けます。単一のチャネルに頼るのではなく、複数のチャネルを組み合わせることが重要です。例えば、ターゲットアカウントのキーパーソンにLinkedInで繋がりお役立ち情報を送る、ターゲット企業にのみ表示されるように設定したデジタル広告を配信する、パーソナライズされたメールを送信しオンラインセミナーへ誘導する、手書きの手紙や企業のロゴを入れた特別なギフトを送るといったアプローチが考えられます。

これらの活動を通じて、ターゲットアカウントとの接点を増やし、エンゲージメントを高めていきます。

ステップ5:営業とマーケティングの連携と効果測定

ABMの成功は、営業とマーケティングの緊密な連携にかかっています。ターゲットアカウントの選定からキャンペーンの実行、効果測定に至るまで、両部門が常に情報を共有し、一体となって動くことが不可欠です。週次での定例会議などを設け、進捗や課題を共有する場を作りましょう。効果測定においては、従来のリード数やクリック率といった指標だけでなく、ターゲットアカウント内でのエンゲージメント率商談化率受注率、そして最終的なROIといった、ビジネスへの貢献度を測る指標を重視します。

XTV社の視点:日本企業がABMで成功するために

ABMは強力な戦略ですが、日本企業が導入する際には、特有の課題や陥りがちな罠が存在します。長年、多くの企業のマーケティング支援を行ってきたXTV社だからこそ見える、成功のための重要な視点をお伝えします。

日本企業が陥りがちな罠

日本企業がABM導入時に陥りがちな罠として、まず「ABMは大企業のもの」という思い込みが挙げられます。しかし、ABMはリソースの集中投下戦略であり、むしろリソースが限られている中小〜中堅企業にこそ有効であり、「1対多 ABM」からスモールスタートすることも可能です。次に、伝統的な縦割り組織における「部門間の厚い壁」です。マーケティング部門と営業部門の連携がスムーズに進まず、目標やKPIが異なり顧客情報も分断されているため、一貫したアプローチが取れないケースが多く見られます。また、「データ活用の軽視」も課題です。「勘と経験」に頼った営業活動から脱却できず、データに基づいたターゲット選定や効果測定が疎かになりがちで、結果としてABMの成果を正しく評価できず、取り組みが頓挫してしまうことがあります。最後に、「短期的な成果への固執」です。ABMは顧客と長期的な関係を築く戦略であるため、短期的なリード獲得数だけを追い求めると、本来の目的を見失い、中途半端な結果に終わってしまいます。

XTV社が提供する解決策

私たちXTV社は、これらの課題を乗り越え、日本企業がABMを成功させるための最適なソリューションを提供します。私たちは単なるツールベンダーではありません。お客様のビジネスを深く理解し、戦略立案から実行、効果測定までを伴走するパートナーです。具体的には、貴社のビジネスに最適なICPの定義から、インテントデータを活用した高精度なターゲットアカウントリストの作成まで、データに基づいてABM戦略の土台を築く「データドリブンな戦略立案」を支援します。また、マーケティングと営業が同じ目標に向かって進むためのKPI設計や、情報共有を円滑にするためのプロセス構築を支援する「部門横断の連携体制構築」を行います。最新のAI搭載ツールなどを活用し、パーソナライズされたキャンペーンの実行や効果測定を効率化し、お客様が本来注力すべき戦略的な活動に集中できる環境を整える「テクノロジーの最適活用」も提供します。ABMは一度導入して終わりではありません。私たちは、定期的な効果測定と改善提案を通じて、お客様のABM活動が着実に成果を生み出し、組織に定着するまでを長期的にサポートする「伴走型支援による着実な成果創出」をお約束します。

まとめ:高価値顧客との共創による持続的成長へ

本記事では、現代のB2Bマーケティングにおいて不可欠な戦略となりつつあるABMについて、その重要性から具体的な実践方法、そして成功のための視点までを解説しました。不特定多数を追いかける時代は終わりを告げ、自社にとって本当に価値のある顧客と深く、長期的な関係を築くことが、持続的な成長の鍵となります。

ABMは、単なるマーケティング手法の転換ではありません。それは、顧客を深く理解し、顧客の成功に貢献するという、ビジネスの原点に立ち返る思想でもあります。この思想を組織全体で共有し、マーケティング、営業、そして経営が一体となって取り組むことで、ABMはその真価を最大限に発揮します。

もし、あなたの会社がABMの導入を検討している、あるいは現在のマーケティング活動に課題を感じているのであれば、ぜひ一度、私たちXTV社にご相談ください。貴社のビジネスを次のステージへと導くための、最適な戦略を共に描かせていただきます。

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参考文献

[1] 6sense. (2024). The 2024 B2B Buyer Report. [2] ITSMA & N.Rich. (2025). What is ABM and Why Does It Matter in 2025? https://nrich.io/blog/what-is-abm-and-why-does-it-matter-in-2025